ののログ

とりとめないやつ

ショック療法

1年くらい前の話。

 

すき家のおろしポン酢牛丼が無性に食べたくなる”という奇病を患っていた私は、その日も発作に抗えず、近所のすき屋に足を運んだ。

 

いつものカウンター席に座り、おろしポン酢牛丼を注文する。

当時は週2~3回のペースでおろしポン酢牛丼を食べていたし、たぶん店員に顔を覚えられていたと思う。裏で「またおろし野郎が来たぞ」とか言われていたかもしれない。

 

おろしポン酢牛丼が運ばれてくる。

いつもそうなのだが、不思議なことに食べる直前には発作が治まっていて、「またおろしポン酢牛丼か……」みたいな気持ちで食べる。

3口目くらいで飽きる。

 

次来たときは別のメニューを食べようなどと考えながらレジに向かい、財布を取り出す。

 

「470円になります」

 

470円。

そのくらいは普段持ち歩いている金額だ。当然あると思って財布を開く。

 

 

 

 

……ない。

 

小銭はおろか、お札も一切ない。

 

なんで……?

 

思い返す。

 

そういえば、数時間前に財布の中身を新しい財布に移したんだった。

いま手に持っているのは古い財布。いつもの癖で持ってきてしまったらしい。

 

時刻を確認すると、夜中の12時過ぎ。

知人に頼んで支払いに来てもらうには迷惑すぎる時間だ。

 

他に良い対処法が思いつかず、仕方ないので正直に店員に話す。

「あの……お金忘れたので家に取りに帰ってもいいでしょうか?」

 

明らかに困惑する店員。その様子を見てさらに慌てる私。

 

「あっ、iPhoneを人質にしていいので……」

気が動転してアホみたいなことを口走る。せめて担保って言えばよかった。

iPhone人質マンとして店員たちの話のネタにされるんだろうな……って考えたら泣きたくなった。

 

その後、私の真摯さが通じたのか店員も承諾し(半笑いだったけど)、人質(iPhone)を残してダッシュでお金を取りに帰り、他の客の視線に耐えながら無事支払いを済ませ、脱兎のごとく店を去った。惨めな気持ちでいっぱいだった。

 

 

あの日以来おろしポン酢牛丼は食べていない。